【平成29年5月の税務】配偶者控除見直し-その意識と働き方調査
配偶者控除等の改正は当初、〈女性の働き方の選択に対して中立的な税制構築〉を目指し、少子高齢化の進展や共働き世帯の増加など社会情勢の変化の下、〈女性の活躍の更なる促進に向け検討〉されることとされていました。
しかし、よくいわれているのが「103万円の壁」。
配偶者が働くためには、現在でもすでに多くの”壁”が存在しています。
①所得税・住民税の負担がない98万円の壁。
②住民税の負担はあるが、所得税の負担のない103万円の壁。
③所得税・住民税の負担はあるが、社会保険料の負担がない106万円の壁。
(平成28年10月からの大企業のパートについて社会保険料の徴収基準が106万円となりました)
④所得税・住民税の負担はあるが、社会保険料の負担はない130万円の壁。
⑤所得税・住民税・社会保険料の負担はあるが、その配偶者(居住者)において配偶者控除の適用がある150万円及び201万円の壁。(これが今回の改正です)
但し⑤の壁はその配偶者(居住者)の合計所得金額により控除額が異なります。
~働く女性のくらしとお金に関する調査2017~ 日本FP協会調べ
「配偶者控除」について
・年収要件の引き上げ(※所得控除の対象となる年収が103万円から150万円に引き上げられること)を知っていたか?
認知率62.8% 既婚者では71.4%
・既婚者(514名)に、配偶者控除の年収要件引き上げに対する意見を聞いたところ、
「評価する」46.3% 「評価しない」11.1% となりました。
・年収要件が150万円になったら、働き方は変わるか
「変わる」24.1%、 「変わらない」49.6%
就業形態別では、
バイト・パート 「変わる」29.1% ←そのほかの就業形態よりも高い
「変わらない」41.5% ←こちらが多数派
・既婚者のうち、年収要件が150万円になっても働き方が「変わらない」その理由
「元々、収入をセーブしていないから(すでに150万円超えなど)」45.5%
「家事との両立のために働く時間を増やせないから」25.1%
「勤務先の事情で働く時間を増やせないから(シフトを増やせないなど)」18.0%
「育児との両立のために働く時間を増やせないから」16.1%
「今より収入を増やせる好条件の働き口がないから」16.1% が上位回答。
バイト・パートの回答
「家事との両立のために働く時間を増やせないから」37.0%
「社会保険の壁(いわゆる106万円や130万円の壁)があるから)」21.3% が上位回答。
配偶者控除の見直しは当初、配偶者控除を廃止し、夫婦であれば一律で受けられる夫婦控除を新設する、といった議論がなされていたこともありました。
そこで、
・既婚者(514名) 「配偶者控除を廃止し、夫婦控除にする」という方針に賛成か反対か
「賛成(夫婦控除にすべき)」30.7%
「反対(配偶者控除を残すべき)」18.5%
現時点で配偶者がいて、仕事をしている女性に限った意見ではありますが、賛成が反対を上回りました。
就業形態別では、
正規社員・職員 「賛成」37.4% 「反対」9.2%
契約・派遣は「賛成」45.5% 「反対」20.5%
パート・バイト「賛成」23.5% 「反対」22.9% ←パートでは、賛否が拮抗する結果となりました。
平成29 年度税制改正の大綱(平成28 年12 月22 日閣議決定より)
個人所得課税関係
配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し
見直しのポイントは次の3点であり、平成30年分以後の所得税(平成31年分以後の住民税)に適用されます。
① 38万円控除の対象となる配偶者の所得要件を合計所得金額85万円以下(※)に拡充
② 配偶者特別控除の拡充
③ 配偶者控除の適用に本人の所得要件(上限)が設けられた
(※) 給与所得のみの配偶者の場合、給与収入150万円以下
(国税関係)
控除対象配偶者の所得要件(合計所得金額38万円以下)に見直しはなく、38万円控除の対象となる配偶者の所得要件の緩和は、配偶者特別控除を拡充する方法で対応されています。
一方、従来は、配偶者控除の適用に本人の所得要件はなかったが、今回の見直しで新たに本人の所得要件が設けられました。具体的には、本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、配偶者控除の適用ができなくなります。
なお、配偶者特別控除の適用にかかる本人の所得要件(合計所得金額1,000万円以下)は、そのまま継続されます。
また、本人の合計所得金額が900万円超1,000万円以下にある場合には、配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額が3段階で減少する仕組みが導入されています。
なお、合計所得金額が1,000 万円を超える居住者については、配偶者控除の適用はできません。
配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額は、38 万円超123 万円以下(現行:38 万円超76 万円未満)となります。
なお、現行制度と同様、合計所得金額が1,000 万円を超える居住者については、配偶者特別控除の適用はできません。
今回の改正は、働く人の配偶者(居住者)に対する所得控除が重視され、当初検討されていた「夫婦控除」などは後退しました。
当事者にとって、考える”壁”を増やすだけのものとなってしまうのではないか、その判断は非常に難しいところとなっています。
働きたい人が、就業調整を行うことを意識せずに本当に働くことができるのでしょうか。
わたしたちは今後も引き続きこのことを考え、政策動向にも注目していく必要があるでしょう。
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平成29年 5月の税務
[5月10日]
4月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
[5月15日]
特別農業所得者の承認申請
[5月31日]
個人の道府県民税及び市町村民税の特別徴収税額の通知
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3月、6月、9月、 12月決算法人・個人事業者の3月ごとの期間短縮に係る確定申告
<消費税・地方消費税>
法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
9月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
消費税の年税額が400万円超の6月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
消費税の年税額が4,800万円超の2月、3月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告 (1月決算法人は 2ヶ月分、個人事業者は3ヶ月分)<消費税・地方消費税>
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自動車税の納付
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