【税務】私たちの暮らす自治体にも新税導入?増える「法定外税」
大阪府は、平成29年1月1日より、法定外目的税として宿泊税を導入し、その税収規模は年間10億円と予想されています。
大阪府が導入した宿泊税は、観光インフラ整備を急ぐため、財源を確保することを目的に創設されました。宿泊者1人1泊の部屋代1万~1万5000円未満までで100円、1万5000~2万円未満までで200円、2万円以上で300円を課税するというもので、大阪府民でも課税されます。
〈大阪府HPより〉
▷【平成28年10月の会計】大阪府宿泊税導入2016.10.17up
(改正により、課税対象が広がります。改正条例は平成29 年7月1日 より施行予定です)
2016(平成28)年、日本を訪問した外国人観光客は2400万人に達しましたが、増加傾向は今なお続いており、2017(平成29)年は、さらなる増加が見込まれています。
観光客が増加すれば、観光収入も比例して増えます。観光によって日本経済も復活すると、安倍首相は観光立国を推進することを宣言しています。
増える訪日外国人に対応するため、地方自治体はまったく追いついていない観光インフラ整備を急いでいます。例えば、近年、都心部では韓国語・中国語の観光案内板やパンフレットが充実してきており、地方では英語表記がようやくですがみられるようになりました。
「宿泊税」は税収効果が高い
大阪府の宿泊税は、それを活用した2017年度以降の事業について、「大阪都市魅力創造戦略2020」で策定した重点取組を中心に取り組んでいくとされ、すでに多くの事業が発表されています。
大阪府の宿泊税は、国内初となった東京都の宿泊税を模倣したものといわれています。2002(平成14)年石原都知事時代に東京都に導入された宿泊税は、地方自治体関係者の間では「法定外税の成功例」といわれています。
消費税やたばこ税の増税が報道されるので目立つことは少ないですが、今般、地方自治体は相次いで法定外税を新設しています。法定外税は、2000(平成12)年に地方分権一括法が施行されたことに伴い、地方自治体の裁量権が拡充し、その影響で相次いで創設されるようになりました。
2000年前後に導入された法定外税は、核燃料税や産廃事業税といった事業者に課すものが目立ちました。そのため、住民が直接的に支払うものは少なく、当時住民にとって重税感はあまりありませんでした。
課されるのは事業者から住民へ
ところが、近年になって法定外税の趣が異なり始めています。財政難にあえぐ地方自治体は、ターゲットを住民の財布へと切り替え始めているのです。
東京都では、実現には至りませんでしたが、大型ディーゼル車高速道路利用税やパチンコ税なども検討されていました。宿泊税は、今や年間20億円を東京都にもたらす税となっています。そうしたことから、宿泊税のように新しい法定外税を創設すれば、当然ながら大きな財源となると考えられているのです。
「乗鞍環境保全税」: 岐阜県(2003年施行)
「産業廃棄物税」
多くの都道府県で採用されており、都道府県が単体で課税するのではなく、複数の都道府県が共同で導入している場合が多い。1トンあたり1000円の課税をしているところがほとんどである。
「環境未来税」: 福岡県北九州市(2003年施行)産業廃棄物税の一つ。
「遊漁税」: 山梨県富士河口湖町(2001年施行)日本で最初の法定外目的税。
検討時には強い反対が
法定外税は、地方自治体が独自に条例を制定して課税・徴税します。特定の自治体だけに課税される税金になるため、負担者(納税者)からの不公平感は強くなります。そうした性格から、地元住民や業界団体から反対されることも多く、東京都が始めたホテル税も、導入当初はホテル業界から根強い反対がありました。
例えば、2008年に杉並区が導入を検討したレジ袋税も反対が強かった法定外税として知られています。法律では事業者に課税するとなっていましたが、消費者にそれらが転嫁されることは明らかで、あまりにも強い反対だったため、環境意識が向上し、不要なレジ袋をもらう人は少なくなりました。これにより杉並区は、レジ袋税が一定の役割を果たしたとの見方から、レジ袋税は施行されないままとなっています。
ほかにも、大阪府泉佐野市は飼い犬に税金を課す犬税の導入を検討したことがあります。これも根強い反対から断念に追い込まれました。
その他未制定・現在協議中の例
「ミネラルウォーター税」
山梨県はミネラルウォーターの生産量が日本一を誇る一方、森林涵養に数十億円の県税を支出していることから2000年に提唱されたもの。県民からはある程度の支持は得られたもののミネラルウォーター業者および消費者からの反発が強く、現在も未決のままとなっています。
課税方法を超過課税方式に
自治体が独自に課税する法定外税は不公平感が強いため、地方自治体は別の方法で増税を検討しています。それが、超過課税方式と呼ばれるやり方です。
超過課税とは、以前から徴収している都道府県税に上乗せするかたちで課税する税金です。都道府県税に混在させることで、納税者は増税されたことに気づきにくくなります。超過課税方式として、すでに30以上の府県で森林税が導入されています。
従来の都道府県税などに金額を上乗せする森林税は、自治体によって微妙に税負担が異なります。2016年4月から森林税をスタートさせた京都府は府民税に年間600円が、大阪府は年間300円が上乗せされます。森林税は、その使途が「森林整備や林業振興に使う」ことに限定されています。
森林税に関しては、環境意識の高まりから、強い反対はありません。導入された森林税は県民・府民も一定の理解をしているものと考えられます。
ですが、法定外目的税をきちんと把握している納税者が多いとは思えません。近年は環境保全意識の高まりを受け、都道府県民税とは別に、政府が国税として森林を守るための増税を検討していくかもしれません。
増税に対して住民側に痛税感が薄れてしまえば、新税や過去に断念したはずの税を再検討する可能性があります。自分の住む自治体に導入される可能性は十分にあります。
今、消費税やたばこ税の増税ばかりが注目を浴びがちです。酒税は、税制を簡素化し、製造メーカーへの配慮から10年程度の長い時間をかけて見直すこととされています。そうなれば、消費者の増税感はどうしても鈍くなってしまいます。
〈知らぬ間に納める税金が増えてしまっていた〉ということがないよう日々の暮らしを送ることが私たちにとって大切なことなのです。
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