columnコラム

【平成28年11月の人事】社会保険適用拡大(2016.10より)

社会保険の適用拡大などに伴う年金関係等の制度変更

「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律(平成24年法律第62号)」の一部(社会保険の適用拡大など)が10月1日から施行されたことに伴い、必要な経過措置が定められました。

(1)短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大

①新たに加入することになる対象者

従業員501人以上の企業で働くパートタイム労働者のうち、

(1)週の所定労働時間が20時間以上

(2)勤務期間が1年以上見込まれること

(3)月額賃金が8万8000円以上

(4)学生以外

という要件をすべて満たす場合、社会保険が適用されます。

 

お手もとに雇用契約書や労働条件通知書、給与明細書などをご用意の上、ご確認ください。

任意の仕組みではありませんので、要件に当てはまる方は、必ず加入していただくことになります。

 

現在の公的年金制度では、老齢厚生年金を受給しながら働いているパートタイム労働者が、社会保険の被保険者となった場合、年金の一部または全部が支給停止となることがあります(在職支給停止)。

この仕組みは、

(1)働いても不利にならないようにする

(2)現役世代とのバランスから、一定以上の賃金を得ている方については、年金給付を一定程度我慢してもらい、年金制度の支え手に回ってもらう

という2つの視点のバランスの中で設けられているものです。

(例)60歳以上65歳未満の厚生年金を受給している被保険者

・賞与を含めた月収と年金の合計額が28万円を下回る場合→引き続き全額を受給できます。

・合計額が28万円を上回る場合は→その額から28万円を引いた額の半分の年金が支給停止となります。

・さらに、47万円を上回る場合は→その額から47万円を引いた額の年金が支給停止となります。

 

保険料を支払った分は、退職時に年金給付が増える形で反映されます。

また、雇用保険の高年齢雇用継続給付を受け取っている方は、上記の在職による年金の支給停止に加えて年金の一部が支給停止されます。

とくに、特別支給の老齢厚生年金を受給している65歳未満のうち、長期加入者(厚生年金被保険者期間が44年以上)、または障害者(障害等級が1級から3級に該当)の特例措置対象者については、年金の定額部分が全額支給停止となります。
厚生労働省では、この定額部分の全額支給停止による激変を緩和するため、「同じ事業所で引き続き働いている人が被保険者になったとき」など一定の要件を満たす場合に、定額部分の支給停止を行なわないこととする経過措置を定めました。

(2)厚生年金の標準報酬月額下限の引下げ

②厚生年金保険の標準報酬月額の下限が、9万8000円から8万8000円になりました。

(3)厚生年金保険料率の引上げ

③厚生年金の保険料率は、9月分(10月分給与の源泉徴収)から0.354%引き上げられました(~8月分17.828%、9月分~18.182%)。

 

月々、賃金に応じて保険料を支払っていただくことになりますが、働くことができなくなった老後に年金が増えるなど、給付がより厚くなるという加入のメリットがあります。

少子高齢化の進む中で、長期的には給付水準はゆるやかに低下していく見通しですが、日本で経済活動が営まれている限り、将来の保険料収入や税収入がなくなることはありませんので、年金が受け取れなくなることはありません。

公的年金制度は、現役世代の方が納める保険料を高齢者などの年金の給付に充てるという世代と世代の支え合いの考え方を基本としています。

また、保険料収入以外にも、積立金の運用収益や国庫負担が年金の給付に充てられています。国が運営し、国庫負担や事業主負担があることは、個人の貯金や民間保険にはない大きなポイントです。

 

必要な事務手続きは、基本的に会社を通じて行いますので、お勤めの会社のご担当者にご確認ください。保険証は新たに加入する健康保険の保険者から発行されることになります。

ただし、それまで国民健康保険に加入されていた場合は、お住まいの市区町村に対して、国民健康保険の資格喪失の届出をご自身で行う必要があります。

また、ご家族の健康保険に加入していた場合は、その健康保険の資格喪失の届出をご家族の会社を通じて行う必要がありますので、その旨をご家族の会社に申し出てください。

 

今回の改正は、要件を満たした方が国民年金・国民健康保険ではなく、厚生年金保険・健康保険に加入するというものです。

年収130万円の被扶養認定基準は、自身で保険料を支払うか支払わないかの基準で、今回これに変更はありません。また、年収130万円未満であっても加入対象にあてはまる場合(※コラム参照)には、被扶養者とはならずに、自身で厚生年金保険・健康保険に加入することになります。(年金・健康保険の被保険者区分については、こちらをご覧ください。)

【税理士法人Bridge大阪】※新・106万の壁に関するコラム記事_2016.7.22up
https://bridge-osaka.com/2016/07/22/878

なお、雇用保険の取扱いも同様であるため、週20時間未満で勤務する場合は、厚生年金保険・健康保険に加入できないだけでなく、雇用保険にも加入できないこととなりますので注意してください。

(社会保険の対象範囲につきましては、平成31年9月までに、さらに検討を進めることが法律で決まっております。)



日本年金機構のホームページで、年金事務所の住所、電話番号、管轄地域などを公表しています。下記URLから都道府県を選択した上、利用したい地域の年金事務所の情報をご確認ください。

※日本年金機構のホームページ
http://www.nenkin.go.jp/section/soudan/index.html

 

11月の人事

 

業務の進捗状況のチェック

年末年始を控え、何かと気忙しくなる時期です。各種申請や締切のある事項をピックアップして早めに業務計画を立て、モレやミスが生じないよう確実に処理を進めていきましょう。

 

年賀状・カレンダー・手帳などの準備・手配

平成29年用のお年玉付き年賀はがきは11月1日から販売が開始されています。なお、年賀特設サイト「郵便年賀 jp」(http://yubin-nenga.jp/)では、法人向けの販促用はがき等の注文も受け付けています。
来年の干支は「とり(酉)」です。年賀状の文案やデザインは早めに決めて、印刷などを業者に外注する場合は11月中に手配しましょう。
また、社内で年賀状を作成・印刷する場合は、年賀はがきの送付先リストをデータベース化しておくと、後々の名簿管理にも役立ちます。
取引先に配付する来年のカレンダーや手帳なども時間に余裕をもって発注しましょう。11月下旬には営業担当者に渡せるようにしたいところです。

 

歳暮の手配

歳暮を贈る場合、11月下旬にはデパートの外商などを通じて発注し、12月上旬には相手先に届くよう手配します。直接持参すべき取引先は、担当者とスケジュールを決めて訪問します。
昨年の歳暮とことしの中元の送付先・贈答品一覧表を作成し、前もって各部署に回覧して、追加・訂正とランク付けをしてもらい、それを参考に何を贈るか決めるとよいでしょう。

 

暖房器具・設備の整備・点検

11月になると、大半の地域で暖房が必要になってきます。
暖房器具・設備は早めに整備・点検を済ませ、いつでも使えるように準備しておきましょう。

 

火災予防対策

11月9日から15日まで、秋季全国火災予防運動が実施されました。今年度は「消しましょうその火その時その場所で」が全国統一防火標語です。
これを機に、社内で消防訓練を実施して、消火器の設置状況や操作方法の確認、緊急時の避難経路・誘導方法などを周知徹底しておきましょう。
非常階段や出入口周辺に商品などが山積みになっていないか、重要持ち出し品はきちんと保管してあるか、といったことも点検します。
特に屋外に段ボールなどを放置していると、放火の原因にもなりますから速やかに撤去しましょう。

 

冬季賞与の支給準備

11月も半ばになると、冬季賞与に関する情報が各種媒体で発表され、地域や業界ごとの相場もみえてきます。必要な資料を揃え、支給原資の検討や各人の考課・査定を始めましょう。

 

採用内定者のフォローアップと次年度の採用準備

採用内定者は、入社までに様々な不安や迷いを抱くものです。特に内定の時期が早いと、それに応じて内定から入社までの期間も長くなりますから、これから辞退者を出さないためにも、きめ細かなフォローが必要です。
内定者懇談会の開催や自社資料の送付など、内定者へのフォローを積極的に行ないましょう。
また、来春新卒者の選考が終われば、次年度の採用計画を立てることになります。経営・人事計画に沿って採用人員を検討し、告知を行なう媒体の選定、入社案内の作成、募集スケジュールの調整などを進めます。

 

年末商戦に向けた人材の確保

年末商戦で製造や販売、配送などに臨時のパートタイマー・アルバイトが欠かせない企業は、要員計画を立てて募集をかけます。
企業における人材不足感は年々高まっています。早めに確保・補充を行ないましょう。

 

労働時間の適正管理

厚生労働省は毎年、「勤労感謝の日」がある11月に労働時間適正化・過重労働解消等をテーマにしたキャンペーンを行なっています。
例年、過重労働による健康障害の防止、賃金不払残業(いわゆるサービス残業)の解消について、全国的に周知・啓発活動を実施するほか、長時間労働等に関する情報受付窓口を設置するなど、監督指導等にも力を入れています。
繁忙期は不注意などから事故が発生する可能性も高まります。人手不足で過重労働になっている部署はないかなど、労務管理の状況を再確認しておくことが大切です。

 

ストレスチェックの実施・記録保存

従業員数50名以上の事業所では、11月30日までに、第1回目のストレスチェックを実施する必要があります。
実施後は、実施者または実施事務従事者から受検者本人に通知されたストレスチェックの結果を踏まえて高ストレス者を選定し、プライバシーに配慮しながら、医師による面接指導の要否を確認します。
受検者の同意により提供されたストレスチェック結果の記録は、5年間の保存義務があります。第三者に見られないよう厳密な管理を行なうことが求められます。

 

【税理士法人Bridge大阪】

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