【平成28年11月の会計】経費の「経済的合理性」
税法を理解することは、法律の専門家でも難しいといわれています。ましてや会社で総務や経理を担当している方たちは、法律に関してご存知ないことも多いのではないでしょうか。税実務において、判断に迷うこともおありでしょう。そこで「税の考え方」のポイントについて解説します。
節税とは、税法の規定の範囲内で経済的合理性のある行為を行い、結果として税を軽減することです。すなわち節税は合法な行為なのですから、「合法的な節税」「違法な節税」という考え方自体が存在しないことになります。
節税を行うことに何も問題はありません。むしろ、中小企業の経営者が節税努力するのは当然のことです。
しかし経済的合理性を欠く節税策は問題です。
違法な行為ではありませんが、課税当局との間でしばしば問題になるのが租税回避です。
租税回避とは、形式的には合法ですが経済的合理性を欠く行為を行い、その結果として税の負担を不当に回避または軽減することです。
日本では、資本金1億円以下の中小企業が企業全体の9割以上を占め、そのほとんどが同族会社といわれます。その同族会社でよく行われる節税が、
・経営者の親族に払う給与
・役員社宅
・短期の前払費用、消耗品費等、特別償却 等々
などです(他に、生命保険を使った課税の繰延べもポピュラーな節税策です)。
先程も述べた通り、節税自体は違法ではありませんが、それも度が過ぎると租税回避行為に該当することがあります。実際、経営者の親族等に支払う役員給与は、税務調査などで「支給額は業務内容や世間相場に照らし合わせて適正か否か」がよく問題になります。
また、「短期の前払費用」や「消耗品費等」などについても、経済的合理性を欠くものについては、損金に計上することに制限が設けられています。
例えば「消耗品費等」の損金算入について、法人税基本通達には次のような規定があります。
(消耗品費等)
2-2-15 消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品(中略)その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加)
(注) (省略)
消耗品等を取得したときの費用を何でも損金に算入することが認められると、節税目的で通常購入する額を超えて消耗品等を購入しようと考える者もいるでしょう。しかし、そうしたケースについては租税回避行為として損金への算入を否認されます。
納税者が勝訴を勝ち取る税務訴訟事例でいいますと、その取引に経済的合理性が存在することを根拠に納税者の主張が認められることも少なくありません。また、税務行政でも納税者がその行う取引に経済的合理性の存在を立証できれば課税庁から否認されるケースも軽減されるでしょう。
したがって、納税者がこのような経済合理性に着目して取引を行うこと及びその立証を可能とする用意を進めることは、見解の相違が生じがちな税務行政において重要であり、納税者の負担を軽減する助けとなることが期待できると考えます。
脱税は論外ですが、節税も行き過ぎると租税回避とみなされます。納税モラルの低い企業というレッテルを貼られたときの代償は計り知れません。社会的な信用が失墜するだけではなく、最悪の場合、多額の税負担により倒産に至ることがあります。
経済的合理性が存在する取引とはいかなる取引であるかは、一般に予想し得る状況でリスクが最も少ないか又は考え得るリスクを回避する取引であり、かつ、そこから最大の利益が見込める経済取引といえましょう。
たとえ合法であっても、経済的合理性を欠く行為は租税回避とみなされますので細心の注意が必要です。
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平成28年11月の会計
年末調整の準備
特に年末調整については、11月から準備を進める必要があります。この時期、税務署や市区町村などで年末調整事務の説明会が開かれますから、できる限り出席して、事務の要点をチェックしておきたいものです。
あわせて、各種控除申告書などの関係書類を早めに入手し、社員に配付します。このとき、年末調整に関する注意事項や、控除を受けるために必要な控除証明書などが一覧できる資料を作成し、一緒に配るとよいでしょう。
年末から年度末にかけての資金計画の見直しと資金手当て
冬期賞与の支給、歳末商戦など何かと資金が必要な時期を迎えます。年度末にかけての資金計画を見直し、借入が必要な場合には、金融機関に提出する書類の準備を進めます。
年末に増えがちな商談や会合、打合せの費用など、細かい支出もしっかり管理したいところです。
3月決算法人の中間申告・納税
3月決算法人は、11月が中間申告・納税の時期にあたります。
中間申告には、前事業年度の納税額の2分の1を納付する予定申告と、仮決算による実績申告の2種類があります。事務負担も含めて都合のよい方法を選択しましょう。
ただし、仮決算した場合の法人税額が前期基準額(前事業年度の確定法人税額の2分の1)を超える場合、選択できるのは予定申告による方法のみとなっています。
歳末セールの税務対策
歳末セールの実施に際しては、値引販売や販促費の支出、催事企画の費用、パートタイマーやアルバイトの人件費など、例月にない売上形態や費用が発生します。
これらの費用は、営業の現場で突発的に発生するものも多く、税務上、不適切な処理をしてしまう可能性がありますので、費用支出・売上計上の方法についてチェックしておきましょう。
得意先管理と売掛金の回収
冬物商戦用の仕入、3月決算法人の中間納税などの必要資金を確保するためにも、得意先管理を徹底し、売掛金の完全回収に努める必要があります。
営業に対して滞留売掛金の状況や支払いの悪い得意先をまとめた資料を提供するなど、積極的にサポートしていきましょう。また、経理から残高確認書を送って残高確認を行なうことも、モレのない回収につながります。
被災社員へのアドバイス
社員が災害等で損害を受けたときには、所得税の雑損控除か、災害減免法による所得税の軽減または免除のいずれかを選択適用できます。
災害(震災、風水害、冷害、雪害、落雷、火災など)、盗難、横領による損失が雑損控除の対象で、次のいずれか多い額を所得から控除できます。(1)差引損失額-総所得金額等×10%
(2)差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円
なお、損失額が大きく、その年の所得金額から控除しきれないときは、翌年以後(3年間が限度、ただし東日本大震災による場合は5年)に繰り越して、各年の所得金額から控除できます。
【災害減免法】
災害によって受けた住宅や家財の損害金額がその時価の2分の1以上で、かつ、災害に遭った年の合計所得金額が1000万円以下の場合には、所得税額が軽減または免除されます。
・合計所得金額500万円以下→所得税額の全額を免除
・同500万円超750万円以下→所得税額の2分の1を軽減
・同750万円超1000万円以下→所得税額の4分の1を軽減
多忙時のミス撲滅
年末に向けての繁忙期には、思いがけない処理の誤りやモレが生じがちです。慣れているつもりの業務も気を抜かず、入念な事前準備とダブルチェック、フォローの徹底など、ミスが起きにくい体制を整えることが大切です。
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